12ハウス

心理占星術における12ハウス

もくじ

    12室(12ハウス)の定義

    従来の占星術においては【隠れた敵・自滅】と呼ばれ恐れられてきた12ハウスですが、必ずしも悪い意味を持つものではありません。現代占星術においては「隠れた何か」「目に見えないもの」という意味も含めて解釈します。

    12ハウスと1ハウスの境界に「自我」を表すアセンダント軸があります。1ハウスが「自己像(既に認識している自分)」だとすると、12ハウスは「見えない(無意識に持つ)自分の性質」または「自分のブラインド・スポット(盲点)」を表すと考えることができます。

    12室が【自滅・隠れた敵】を表すのは、誰もが多かれ少なかれ無意識に、自分自身の欲求充足を妨げる考え方や行動の習慣を持っているということでしょう。こうした習慣がもたらす負の蓄積は時として健康問題に発展し、時として人間関係に害を及ぼします。

    とはいえ、12ハウス内の天体が必ず「自滅」につながる要素となるという見方はナイーブすぎます。例えば、「隠れた表現」「表立たない表現」を必要とすると捉える事もできるでしょう。「隠れている=悪いもの」ではない、という事ですね。

     

    蓄積された習慣:初期家庭がつくる「当たり前」のブラインド・スポット

    「ブラインド・スポット」の最たるものが、初期家庭の親からの影響です。12ハウスは10ハウス(父親)の派生3ハウス(考え方・話し方)であり、4ハウス(母親)の派生9ハウス(世界観)です。子供は両親の考え方、話し方や世界観を驚くほど素直に受け入れます—それらがどれほど有害なものであっても、です。

    例えば、「笑わない」両親のいる家庭に育った子供は、「無表情」という習慣を身につけます。成人後、感情表現の乏しさのあまり周囲に敬遠されたり、出世のチャンスを逃したりしても、それが原因であるとはなかなか気付かないかもしれません。自分の無表情は「当たり前のもの」だからです。

    批判的な親、冷たい親、乱暴をする親、喧嘩の絶えない家庭など、初期家庭の不幸の形は様々ですが、子供にとっては唯一の「家庭の経験」がそこにあり、そこから「当たり前」の習慣がいくつも生まれます。

    逆に、子供をよく褒める親や、愛情表現の豊かな両親の下で育った子供は、それらの性質を当たり前の習慣として身につけます。この場合は無意識の内に自分の強みとなるものを身につけているのですが、こうしたポジティブな性質は周囲から認識され、褒められる事が多いので、早くに第1ハウスの「自己像(認識した自分の性質)」の領域に入っていくでしょう。

    こう見ると、やはり12ハウスという無意識に残りがちなのは、望ましくない性質の方がやや多いであろう事は否めません。

     

    無意識の意識化:1ハウスへの準備

    フロイトに始まる様々な心理療法においては、「無意識な習慣や衝動」を意識化することが、自我の解放につながると考えられています。この視点から見ると、12ハウスに関連する「不運の時」、例えばビジネスや人間関係が破綻したり、重い病気を患ったりした時は、今まで気がつかないでいた自己破壊的な習慣に気付くチャンスを与えられている、と捉える事も可能です。実際に、こうした逆境がかけがえのない気付きをもたらし、大きな転機となったというお話も良く聞きます。

    以前来日セミナーの最中に、ノエル・ティルが「12ハウスは、1ハウスへ進むための準備です」と言っていたことが印象に残っています。これは、常に人生の流れと成長を意識しているティル先生ならではの発言ですが、12ハウスと1ハウスの密接なつながりについても表していると言えるでしょう。

    「無意識の意識化」を通じた気付きの深さが増せば増すほど、12ハウスの様相は「隠れた敵」ではなく「隠れた能力と可能性」を秘めた、創造的な領域へと変化していくでしょう。例えば土星は人生で12ハウスを少なくとも2度は通過するでしょうが、約30年を隔てた1度目と2度目では大分違った経験となるかもしれません。

    自由で力強い自己像を勝ち取るためには、自分の影と向き合う事も時には必要とされる。12ハウス内の天体は、何よりもその事を示してくれているのかもしれません。

     

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    Photo: Timur Samkharadze

    新里ひろき
    新里ひろき

    アメリカ・フロリダ州在住の心理占星家。西洋占星術界の重鎮ノエル・ティルに師事。氏の難解で有名なマスターズ占星術認証コースを最優秀の成績で卒業。日本と英語圏の両方で個人セッションとノエルティル流心理占星術の講師として活動中。

    この記事へのコメント

    1. まき より:

      私は太陽、月、キロンが12ハウスで水星も12ハウスにとても近いので、自称12ハウスの女です。
      占星術を勉強していますが、一番大事な太陽と月が12ハウスなので正直私の事が一番分からないです^_^;。
      自分と向き合い続けることが生まれてきた目的なのかなぁとか。占星術や心理学が好きなのも12ハウスが強いからかなと思っています。

      1. 新里ひろき より:

        まきさん コメントありがとうございます。

        12ハウスには「見えない世界」とのつながりという意味もありますから、占星術や心理学など形ないものを扱う分野も含まれています。

    2. カナッペ より:

      はじめまして。
      以前より度々ブログを拝見させて頂いております。
      理性的で淡々としながらも、どこか温かさを感じる文章がとても好きです。ホロスコープを学び始めて日が浅いですが、かなり、参考にさせて頂いてます。

      私は冥王星が月とスクエア状態です。調べれば調べる程辛い配置とのことでかなり落ち込んでおります(しかしながら何が辛いのかは分かっておりません)。しかも冥王星は12室なので、こういう場合は適合ハウスとして力が増大するのだろうかと、なんだか絶望感しか持てなくなりました。

      12室にある冥王星についてどのように捉えていけばよいのでしょうか。
      よろしければアドバイスください!

      ホロスコープをやる前は、冥王星は一番好きな天体でした。どこか惹かれるものがあります。
      それなのに今はどこか恐ろしくて、そう変わってしまったのも悲しいです。
      また好きになってみたいです‥
      よろしくお願いいたします。

      1. 新里ひろき より:

        カナッペさん コメントありがとうございます。

        冥王星は深い変化の可能性を示す象徴ですから、占星術そのものの可能性を表す天体でもありますね。冥王星アスペクトに関する記事も増やして行く予定ですので、ご期待ください。

        12ハウスは日常では意識しにくい領域ですが、瞑想やスピリチュアルな体験、または芸術的経験などを通じて入れる「無意識」の領域とされています。12ハウスの冥王星は、こうした活動を通じて、これまでの自分とは全く違う自分の本質を見出す可能性、という風に見ることができます。

        4月から進化占星術の基礎を教える講座を始めますので、興味があれば、そこからも沢山学びがあると思います。

    3. 12ハウスの月 より:

      はじめまして
      12ハウスについて、ポジティブで広い解釈にホッとしました。他のサイトで、12ハウスの月について、詳しく説明されてるものを読みましたが、それが救いのないことしか書いていなくて。たとえば、自殺しても許されるくらい無力だとか、腐っていく自分を見ていることしかできないとか。あらゆる角度から、12ハウスの月がいかに無能で生きていくのが辛い状況にあるのか、説明されてました。

      これを読むと、太陽など他の天体を生かすこともできそうにないですが、それほど12ハウスの月は、悪い意味で影響が強く無力なのでしょうか。

      1. 新里ひろき より:

        こんにちは。月は感情を表すとされているのですが、12ハウスの月は自分でも気づかない感情の抑圧に気づくことが変化に繋がると思われます。

        ただ、12ハウスの月を持っていても活動し成功している方々は沢山いらっしゃいますから、この月に活用の仕方があるのは間違い無いです。他のサイトで書いてある内容に関しては、無意味に辛く感じるものは無視して良いと思います。

    4. モモ より:

      こんにちは。

      ネイタルの12Hですが、土星とキロンがあります。
      土星はMC&木星とセキスタイルでハードアスペクトはありませんが、キロンは水星&金星とスクエア、火星・冥王星・ジュノー・セレスとはオポジションになります。
      やはり何かと不運な面が多いのでしょうか?

      1. 新里ひろき より:

        モモさん 

        12ハウスについてのポッドキャストを最近収録したので、よろしければ聞いてみてください。12ハウスには政府やその他の機関や大きな組織というニュアンスもあるのですが、12ハウスの土星はこうした大きな組織に関わる仕事という現れ方をすることもあります。

        1. 菅野 拓磨 より:

          自分は12ハウス♏♃でアセンダント♏に♇が合なので、♇も12ハウスに影響してるのかなと思いました。
          昔から誤解されやすくて知らない間に敵が出来てるような気がします。

    5. いろは より:

      私は12ハウスに木星があり、この木星が3ハウスにある天王星と海王星にスクエアのアスペクトを取っています。

      また、5ハウス・6ハウスの支配星が天王星・海王星なので、どうしても恋愛や雇用といった面で、円滑にいかないことが多いのですが、

      これは12ハウスの木星が多分に影響しているからでしょうか?

      占星学が4年ほど勉強していますが、よくわかりません。

      お手すきであれば、ご返信いただければ幸いです。

      1. 新里ひろき より:

        いろはさん こんにちは。

        現代占星術では、ハウスの支配星や12ハウスにある天体がこれだから何かがうまくいかない、というような解釈はしません(そもそも、本当にそのような解釈が成り立つとしたら、人は一生問題を抱えたままになってしまいます。) 占星術をご自分の人生のために活用されたい場合は、オンライン講座を覗いてみるか、少なくともポッドキャストをお聴きになってみて下さい。全く違った視点が経験できると思います。

    6. 菅野 拓磨 より:

      12ハウス♏に、♃、♇あります。
      会話のない家庭で育ちましたね。
      やはり、そこでの経験が影響しているのですね。

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