皆様こんにちは、新里ひろきです。
哀しいお知らせです。一昨日12月31日、ノエル・ティル先生が亡くなられました。意識不明でホスピスに入院されているとお知らせを受けてから僅か半日後、息を引き取ったとのことです。83歳の誕生日でした。
「苦難」から「必要なもの」へ
ティル先生のお話には彼の武勇伝も多かったのですが、中にこういうものがあります:
1970年代半ばにThe Principles and Practices in Astrology(占星術の原則と実践)という12冊のシリーズを出版されたティル先生は、アメリカの大きな占星術カンフェレンスで講義することになりました。その頃はオペラ歌手としてヨーロッパ在住だったので、アメリカの占星術界で大勢を相手にお話するのはこれが初めて。
70年代半ばですから、占星術界ではまだ緊張のアスペクトのことを「苦難(affliction)」と呼ぶのが普通の時代です。こうした空気の中で、一人ステージに上がり、ティル先生はこう語り始めました:
「ホロスコープにおける天体の緊張は、【4文字言葉】で表すことができます」
(訳注:英語で4文字言葉というのはNGワードというニュアンスがあるので、これはちょっとしたユーモア。)
「その言葉は・・・【NEED(訳:必要なもの)】です」
この言葉を皮切りに始まったティル先生のレクチャーは、参加していた大勢の占星家たちに衝撃を与え、占星術界のパラダイム・シフトに繋がります(今では、古典の占星家を除いて「苦難」という言葉を使うことはほぼないので、本物の思考改革です)。
【NEED】という言葉は心理学では「欲求」という風に訳されることが多いですし、実際にオンライン講座シリーズでも「心理的欲求」を理解することに焦点をおいています。
しかし、ここでもう少し踏み込んで考えてみると、「必要なもの」という言葉にはそれ以上のニュアンスがあります。
例えば、
今与えられている経験が、自分に「必要なもの」だとしたら。
あるいは、
今悩んでいる事が、やがて自分に必要な成長をもたらすものならば。
天体の緊張を単なる「苦難」と捉えるのと、だいぶ違うアプローチですね。
たとえ欲せずとも、成長に「必要な学び」というのは存在します。
ティル先生はよく
「自分の欠点は楽観的すぎることだ。私は、誰にでも、何でもできると信じている」と仰っていましたが、
それは彼がいわゆる「甘い物の見方」をしていたというわけでは有りません。
逆に、セッションや講座では、身震いするほどシビアで現実的な、「成長・成功に必要なもの」またはそれを妨げる要因についての洞察を語られることも多かったです。
それはつまり、
たとえ成長や変化に「必要な苦労」が伴ったとしても、
望む未来を実現させるためには行うべきことであるという見方。
だから、相手を勇気づけるのと同時に、時には厳しいアドバイスも与えておられたのです。
Solar Arcs や Synthesis & Counseling in Astrologyなどの代表的な著書から、ノエル・ティルのテクニックには「精密な分析と未来予測」の側面が強調されがちですが、それを可能にする「人の成長・成功に関する洞察」が存在していた事も忘れてはいけないと考えます。
「Why(何故)?」という質問への答え
占星術カウンセリングにおいて、ティル先生はよく「Why(何故)?とは最も重要な質問の一つ」と教えられていました。
「貴方は何故、この仕事をしているのですか?」
「何故、この方と結婚したのですか?」
「何故、貴女のパートナーは、貴女のことを愛しているのですか?」
Why?という言葉から、大きな洞察に繋がる答えが得られる事が多いのです。
ある時日本のセミナーにて、「ティル先生は何故、占星家としての道を歩み続けておられるのですか?」という質問に対し、ティル先生が
「奇蹟に近づくためです」
と答えられていたのが印象的です。
2万人を超える数のホロスコープを見てきた占星家が、ドライな「法則」ではなく、敢えて驚きの念に満ちた「奇蹟」という言葉を使う意味。
思えば、ティル先生は適職判定の技術(Midheaven extension process)を紹介されたときも、「これはメソッド(方式)ではなく、思考の手順(プロセス)です」と強調されていました。
ホロスコープの天体配置を、もっと言えば個人の運命を、型にはまった「方式」に当てはめて答えが見つかるわけではない、というメッセージを、様々な言葉で表現されてきたのです。
ティル先生の触れた数多くの人生の中でも、彼の生徒たちに与えたインパクトは多大なものです。昨日から始まり今この瞬間にも、多くの同僚たちが彼の他界を悼み、その豊かな人間性と功績を称え、彼の新たな旅立ちへの祝福を祈念しています。
私も勿論、ティル先生によって少なからぬ変化と恩恵を受けた一人です。偉大なメンターであり友人を失う悼みと共に、それ以上のティル先生への感謝の気持ちで一杯です。
私達は誰も、いつ「その時」が来るのか分からない。
だから、ティル先生から頂いた多くのものを返すためには、
自分がなれる限り最高の占星家となるべく精進を続けることなのだと考えています。
2020年が皆様にとっても、実りの多い年になりますように。
新里ひろき 拝
新里先生、明けましておめでとうございます。
悲しいお知らせ、読ませて頂きました 涙
晩年の本当にわずかでしたが
直接セッションを受けた事
そしてノエルティル式心理占星術と出逢い、学べた事
今更ながら私の人生のターニングポイントだったと感じます。
これから 新里先生から教えて頂いたティル先生の学びを
一人でも多くのお客様に活かせるよう
私も 日々精進していきます。
新里先生 今年も そして これからもよろしくお願い致します。
杉浦さん 明けましておめでとうございます。
ティル先生にとっては「お疲れ様でした」というべき瞬間ですが、私達にとってはこれから始まる道ですね。
今年もぜひよろしくお願い致します。