火星のトランジットの有効期間は、2週間ほど。土星や天王星のように、1年単位で作用するトランジットと比べると、とても短い期間ですが、それでも十分に重要な意味を持ちます。
火星トランジットは、ときに背景にある長期トランジットの“引き金”になります。またそれ自体が、「行動のモチベーション」や「勇気ある決断」を後押しするタイミングとなるのです。
言うなれば、何かを始めるスイッチ。トランジット火星のタイミングを意識することで、より自然な流れに乗りやすくなるかもしれません。
この記事では、火星トランジットの心理的な意味や影響、そして火星が各天体に接触する際に何が起こるのかを紹介していきます。
あなたのホロスコープに火星がどんな影響をもたらすのか、ぜひ確認してみてください。
火星トランジットの心理的なテーマ
決定的な行動を起こすタイミング
2025年6月21日、米国がイランの3つの核施設を攻撃し、世界に衝撃が走りました。この週、トランプ大統領の出生図では、トランジットの火星がアセンダントを通過していました。
まさに、「火星=決断と行動のタイミング」を象徴するような出来事だったと言えるでしょう。
もちろん、この決断には世界中から懸念と批判が集まりましたし、極端な軍事行動を肯定することはできません。
ただし、私たちの日常レベルの人生においても、火星トランジットの時期には、「たとえ批判されても、行動する勇気」が求められることがあります。
決断を後回しにせず、恐れずに動くことでしか、状況を変えられないタイミングがあるのです。
たとえば、こんな場面で:
- 仕事や人間関係などで、理不尽な状況を打開するとき
- 大きな目標に向けて、新しい挑戦を始めるとき
- 不当な扱いを受けている人のために声を上げるとき
日本社会では、集団への同調圧力が比較的強く、「人と違う行動」は避けられがちです。
それでも、火星トランジットの時期には、たとえ批判されたとしても、自分にとって必要な変化を起こす勇気が問われるのです。
火星の2年周期:「力」と「勢い」を育てる期間
本当に大切なことほど、現状を変えるための「決意」や「行動」は、そう簡単にはできないものです。でも、いったん始めてしまえば、次の一歩は少しだけ楽になります。そしてその次は、もっと楽になるかもしれません。
たとえば、火星トランジットの時期に「健康のためにジムに通う」と決めたとします。
最初は、早起きや生活習慣の変更など、簡単ではないかもしれません。
でも、一週間、二週間と続けるうちに、「行くのが当たり前」になってくる。
そして身体が少しずつ強くなっていくにつれて、運動が「辛いだけじゃなく、楽しい」と感じられるようになる――そんな変化が起こります。
火星は約2年かけて太陽のまわりを一周します。
この2年のあいだに「決断と行動」を積み重ねていくことで、勢いと自信が育っていくのです。
仕事でも、学びでも、人間関係でも。
行動し続けていれば、火星が一周して戻ってくる頃には、自分でも驚くような変化や成長を感じているかもしれません。
2年という時間は、小さなスタートが大きな力へと育つのに十分な期間です。
行動しないことで起こる「怒り」:火星の影の側面
すでに目標に向かって動いている人にとって、火星のトランジットは、「決断」や「行動」に必要な勢いやモチベーションを与えてくれるタイミングです。
では、明確な目標がまだ見えていない人はどうでしょうか。
火星のエネルギーは、本来“前に進む力”です。
その力の向かう先が見つからないと、日常の中でイライラや怒りといったかたちで表れることがあります。
たとえば――
ささいなことでの口論、
運転中に感じる不機嫌、
誰かの一言に過剰に反応してしまう……。
もしかすると、それは行き場を失った火星のエネルギーが噴き出しているのかもしれません。
特に、普段から怒りや不満を抱えている人にとっては、火星のトランジットがそれらをさらに刺激します。
結果として、無謀な行動や攻撃的な言動につながる可能性もあるのです。
そんなときこそ、火星のエネルギーを「身体」を通して発散することが有効です。
運動をする、何かを作る、歩く、声を出す――。
「動く」ことによって、火星の衝動を建設的に表現できます。
そして何よりも、
怒りを内に溜め込んで抑うつ的になるより、
小さくてもいいから「行動する」「声をあげる」。
それが、火星の力を健全に活かす第一歩になるはずです。
以上、火星トランジットにおける心理的テーマや、エネルギーを健全に扱うためのアプローチを考えてきました。
ここからは、トランジット火星が出生図の各天体に触れるとき、どんなテーマが浮上するのかを見ていきましょう。本記事では、ネイタル太陽から火星までを例に、その流れをひとつずつ紹介していきます。
(なお、火星のトランジットでは、コンジャンクション・スクエア・オポジションといったハードアスペクトの時期に特に強い影響が現れやすいため、この記事ではそれらに焦点を当てて解説します。)
トランジット火星とネイタル太陽

トランジット火星とネイタル太陽のコンジャンクション、スクエア、オポジション。
トランジット火星がネイタル太陽を活性化させるとき、
それは「自分自身のため」「自分の人生の目標のため」に行動を起こす時期です。
もし、これまで「人生が思うように進んでいない」「何かが足りない」と感じてきたなら、
火星→太陽のトランジットは、勇気のいる決断と、建設的な行動を起こすタイミングが来たことを告げているのかもしれません。
太陽は、「自我・アイデンティティ」「身体(健康)」「人生の方向性」を象徴する天体です。
すでに目標を持って進んでいる人にとっては、この時期はさらに勢いとモチベーションを得られるとき。
また火星には「戦略的な行動力」もあります。
たとえば、コーチやコンサルタントと話し合い、新たな方向性や戦術を定めるのにも最適なタイミングです。
心理的には、火星は「戦士」の元型を象徴します。
理不尽な状況にさらされている人にとっては、火星→太陽のトランジットは、
- 勇気を持って立ち向かう
- 必要なことを言葉にして伝える
- あるいは、戦略的に撤退する
そんな主体的な選択をすることが求められるときでもあります。
いずれにしても、勇気ある行動が、前に進むためのきっかけになるタイミングです。
トランジット火星とネイタル月

トランジット火星とネイタル月のコンジャンクション、スクエア、オポジション。
トランジット火星がネイタル月に接触するとき、
それは「情緒的な欲求」にエネルギーが注がれるタイミングです。
今の自分は、ちゃんと満たされているだろうか?
そんなふうに内側を見つめてみると、今必要な行動が見えてくるかもしれません。
月は、感情や基本的な欲求(安心感・安全・癒し)を象徴する天体です。
たとえば、睡眠不足に悩んでいる人が、火星→月の時期に「意識して休息を取る」ことも、立派な“行動”です。
心身のケアが必要だと感じたときも、遠慮せずに行動に移しましょう。
ただし、自分の感情や欲求を後回しにしがちな人にとっては、
この時期の火星エネルギーが漠然とした不満・イライラ・ストレスとして表れてくることもあります。
そんなときは、無理に動こうとする前に、まずは「立ち止まること」自体が行動になるかもしれません。
- 少しペースを落とす
- 自分の気持ちを見つめる
- ジャーナリングや瞑想、散歩を取り入れてみる
こうした時間が、次に必要な“本当の行動”を教えてくれるはずです。
トランジット火星とネイタル水星

トランジット火星とネイタル水星のコンジャンクション、スクエア、オポジション。
トランジット火星がネイタル水星に接触する時期は、
知性・思考・コミュニケーションが活性化するタイミングです。
- 目標に向けた作戦を立てる
- 難しい分野の学びを深める
- 積極的に発言する
こうした行動にぴったりの時期だと言えるでしょう。
水星は、考え方・言葉の使い方・話すタイミングを司る天体です。
火星がこれに触れると、「これだけは言っておきたい!」というような主張のエネルギーが湧き上がってくることがあります。
- 新しい計画を発表する
- 言いたかったことをついに伝える
- 話すべき「真実」に踏み込む
ずっと黙っていたことを言葉にするタイミングが、まさに今かもしれません。
一方で、火星は衝動的なエネルギーでもあるため、
そのまま出てしまうと皮肉・批判・口論といった形になることもあります。
とくに日ごろから不満やストレスを溜めている場合、トランジット火星→水星の時期は、それが言葉のかたちを取って爆発しやすい時でもあります。
だからこそ、意識的な選択が大切になってきます。
火星の力をうまく使うには:
- 集中した思考に使う
- 建設的なコミュニケーションに使う
- 学びや情報発信、問題解決のために使う
たとえば、記事を書く、企画書をまとめる、学びの時間を確保するなど、
明確な方向性をもって言葉を使うことがこの時期のポイントです。
トランジット火星とネイタル金星

トランジット火星とネイタル金星のコンジャンクション、スクエア、オポジション。
火星が金星に接触する時期は、
「愛」や「快感」への欲求がぐっと高まりやすいタイミングです。
- 恋愛に積極的になる
- セクシュアリティが刺激される
- 美しいものを求めたくなる
たとえば、音楽・アート・おしゃれ・食・香り・マッサージなど、
五感を楽しませる体験にぴったりの時期でもあります。
心理的に見たとき、金星は「調和」「心のリラックス」を象徴する天体。
そこに火星が触れると、緊張を和らげたい欲求と刺激を求める衝動が同時に動き始めます。
この両天体が活性化する一週間は、こんなアクションが特におすすめです:
- 自然の中で体を動かす(登山・川遊び・海水浴など)
- リラクゼーションと美意識を両立できる活動
- 恋人やパートナーと体を動かして楽しめるデート
ポイントは、動き(火星)と快感(金星)の両方を楽しめること。
そうすることで、火星のエネルギーも建設的に使いやすくなります。
一方で、火星は“対立”を生む力でもあるため、火星→金星の時期に
関係性(金星)の中にある抑圧や不満が浮き彫りになることもあります。
- 長年我慢していたことをついに言葉にする
- 遠慮していた行動に一歩踏み出す
- 「ムカついてる」気持ちをそのままにせず、行動に変える
そんな一瞬が訪れることも。
でもこれは、対立を通して本音に触れるチャンスでもあるのです。
トランジット火星とネイタル火星

トランジット火星とネイタル火星のコンジャンクション、スクエア、オポジション。
トランジット火星がネイタル火星に触れる時期は、「自己主張する勇気」が試されるタイミングかもしれません。
自分のために行動したり発言することに慣れていない人、あるいは押しの強い人に囲まれている環境にいる人にとっては、「自分だって発言していい」「同じ権利を持っている」と、自分に自己主張の許可を与える必要が出てくるかもしれません。
心理的に見ると、火星は「自分の存在を示す力」です。
自分の声が人に届くように言葉にし、自分の立場を明確にしながら目標を達成していくエネルギー。
私たちの中の火星は、無視されたり、軽んじられている状態では動けないことを、本能的に知っているのです。
すでに自己表現や自己主張ができている人にとっては、
トランジット火星→ネイタル火星のトランジットは「さらに大きな舞台に上がる」ようなタイミングになるでしょう。より多くの人に自分を見てもらい、自分の言葉を届けるときです。
ただし注意したいのは、自己主張の“影の表現”です。
思い通りにいかないフラストレーションが爆発したり、
イライラをそのまま人にぶつけてしまうような形になると、逆効果になってしまいます。
火星のエネルギーをどう扱うかが、人間関係にも、そしてその後の結果にも大きな影響を与えるでしょう。
まとめ:火星トランジットの活用
ここまで、トランジット火星がネイタル天体に与える影響について考察してきました。
このトランジットの有効期間はおよそ2週間と短めですが、有意義な行動を起こすには十分な時間だと言えるでしょう。
火星のトランジットは、不満な現状を突破するためのモチベーションや、行動に踏み出す勇気と勢いをもたらします。
大切なのは、こうしたエネルギーを意識的に建設的な目標や方向へ向けていくこと。
トランジットのタイミングをあらかじめ把握しておくことで、大胆な行動や勇気ある選択を起こす「勝負どき」を見極め、計画的に活かしていくことができるはずです。